フラメンコとの関わり方
2019年 04月 10日
こんなタイトルで、今回のブログを書こうと思う。
というのは、今までのフラメンコ人生で、
何百人という生徒と出会ってきた経験からなんだけど
多くのフラメンコ研究生の中で、
フラメンコに没頭するあまりに、
心と体のバランスを完全に崩す人を
何度となくみてきて、
最近、またそのケースに陥ってしまった
研究生がいたので、
なので、今回はこれについて書きたいと思ったのだ。
フラメンコを始める理由やきっかけは人それぞれ。
そして、フラメンコを始めてみて、
日頃の仕事や、嫌な事からのストレス発散や、
フラメンコと接することによる心の癒しとして、
仕事:日常生活:フラメンコ の割合を
上手にコントロールできる人、
仕事や家の諸事情で、もっとフラメンコをやりたいけれど、
どうしても出来ない環境や状況にいるからこそ、
自分で気持ちを割り切って、出来る範囲でやる、
というように、心を調整できる人。
このようにコントロールを出来ればいいのだけど、
あまりにも熱心&夢中になり過ぎて、
本人が気が付かないうちに、境界線を越えてしまい、
心と頭の中を占める割が、
圧倒的にフラメンコ中心、になってしまうケース。
とにかく、一日も上手くなりたい!
スペイン人のように一日も早く踊れるようになりたい!
一日も早くタブラオに出演出来るようになりたい!
こういう目標に向かって、頑張るのは素晴らしいこと。
でも、この気持ちが急加速でエスカレートし、
練習をどんなにしても、もっと練習しなきゃと思い、
クラスも取れるだけ取り、
来日するスペイン人のクルシージョも、
仕事を調整して、そしてお金が続く限り、
とにかく取りまくり、
フラメンコ漬けの生活になってしまう。
フラメンコを学ぶためにスペインへ留学したり、
プロを目指しているのなら、当然、
上に書いたようなフラメンコ漬けの日々になるのだけど、
しかし、、、
” 趣味の範囲の中で" と言われることに抵抗がある人が
たくさんいるとは思うけれど、
でも、プロになるのでなければ、
結局は、趣味であり、
そして生活の場が日本で、
忙しい本業の仕事をこなしながら、
そして大変な家事もこなしながら、
残された時間をギューギューに
フラメンコスケジュールを詰め込み、
自分をどんどんと追い込んでいく。
だから、そのような日々が続くと、
身体が疲労困憊してきているのに、
でも心と頭の中では、
フラメンコへの大きな夢を追い続けているから
身体からの悲鳴に気が付かずに無理を続ける。
そして、身体と心のバランスが取れなくなり、
ある日、そのひずみがドカーンと必ず出るのだ。
こういうケースに陥る人の性格は共通している。
本当に真面目で、妥協をしない。
何をやるにも、必死に全力で突き詰め、
少しでも完璧に近付けたい!と思ってしまう、
そんな性格の人が陥りやすい。
その、身体の疲労の極限と、
先を追い求める心のバランスが崩れた時は、
気力、体力、全てが消耗しきってしまい、
まるで心の病のようになってしまう場合が多い。
身体の過度の疲労に加えて
心も、もう疲れ果ててしまうようだ。
今までの、私の知っているケースは、
長期間、完全にフラメンコから離れた生活に戻り、
それでも、本当にフラメンコが好きでたまらない場合のみ、
再びフラメンコに戻ってくる。
でも、多くの場合は、フラメンコを観たり、
聞いたりするのは続けても、
自分が以前、炎の塊りのようになって、
熱中していたのと同じようには
出来ない場合が多い。
それで、ここで私が言いたいのは、
自分が心を豊かにしてくれる趣味を持ちたいと思って
フラメンコを選んで始めたとしたら、
楽しまなきゃ。
常に、楽しみながら勉強しなきゃ。
楽しみながら練習しなきゃ。
「初心忘るべからず」。
そして、
「フラメンコは、どんなに急いで詰め込んでも、
数年という短期間には、
絶対に絶対に絶対に、習得できるものではない」
ということを、常に頭に置いて、楽しみながら
ゆっくりとフラメンコに接していくのが
最も自然体でフラメンコが深まる、いうことだ。
”あの人、短期間にフラメンコがすごく上手になったのヨ”
などという言葉を、時々耳にするけれど、
上手になったように見えるのは、
フラメンコ、なんじゃなくて、「踊り」。
そりゃ身体の訓練をメチャメチャするのだから、
動きに関しては上達する。
当たり前。
でも、踊りという、
身体を使っての動きが上達するのと、
フラメンコの理解力を深めて、
フラメンコに近づいていくのとは、違う。
フラメンコは、スペインという国の文化だもの、
外国の文化を、5年10年でなんかマスター出来ない。
本当にフラメンコが好きなら、
フラメンコはスペインの文化と芸術なんだから、
『 学びには、一生の時間がかかる 』
こういう心構えで、フラメンコに接していくと、
もっともっと心に余裕が出来て、
気負いの力が抜け、楽しめて、
「長い目」で自分とフラメンコの関わり方、
というのが見えて来る。
そうなると、フラメンコの方から自分に
近付いてきてくれていることに、
ある時、気が付くかもしれない。
よくスペイン人の友人が、
「趣味というものに、
ものすごい大金と時間を費やして、
ものすごくマジメに、必死に取り組むのって
日本人しかいないよね。
スペインじゃ、絶対にあり得ない」って。
ハハハ、それが日本人気質なのよ、と
苦笑いするしかないけど、
とにかく、日本人ってマジメ。
それが日本人の素晴らしさでもあるのだけど、
真面目で一生懸命にしても、
楽しむことは、決して忘れちゃいけない、って思う。
フラメンコとの関わり方がこれでいいのか、
時々、立ち止まって、
本当に心から楽しんでフラメンコと接しているのか
自問自答するのもいいかもしれない。
フラメンコという、こんな素晴らしい趣味と
出会えたんだもの。
大切に、愛おしみながら、
楽しみながら勉強させてもらえば、
フラメンコの神様は、
そんな自分をちゃんと見ててくださる。
4月10日
by amicielo33 | 2019-04-10 16:25