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   ありがたい歌い手

7月になって再び、やたらめったら忙しくなってアップアップしている。

忙しくなる時って、これでもかーこれでもかーと、用事が重なって襲ってくる。


そして7月から本格的にリサイタルの準備が始まった。

まずは、事務仕事はもちろんだけど、形としてはチラシ制作から。

たかがチラシと思うけど、チラシは作品の顔になるので、本当に重要なのだ。

だから、チラシ制作の準備にずーーっと振り回されている。



そして今日は、私のリサイタルに出演してもらう、ダビ・ラゴス について書きたいと思う。

私のリサイタルで、前回も前々回も彼に歌ってもらっている。

ダビの歌は、ガンガン前に出ていく、強くてぶっといタイプの歌い方ではない。

繊細さ、強さ、巧妙なテクニックを持ち合わせ、さらにベテランの貫録をただよわせる。

長い呼吸の中で、声が一挙に駆け上がったり、落ちてきたり、渦を巻いたりする中、

絶対に揺るがないフラメンコの味と香りとコンパスが、ガッチリを全体を支えている。

そんな彼の歌が、私は大大大好きだ。



そして何よりも!なぜ彼に、毎回私のリサイタルの仕事をお願いするかと言うと、

歌がうまいだけじゃない。 私にとって大切な理由があるのだ。

とにかく、カンテについて博学。

多くの場合、有名なスペイン人のプロの歌い手でも、自分の得意とする歌以外は歌わない。

だから、持ち歌は素晴らしいけど、それ以外の歌は知らないし、

ゆえに歌ってくれない、というのが非常に多い。

でも、ダビの場合(他にも博学な歌い手はたくさんいるけれど)、

ものすごい数の引き出しがあるみたいで、

万が一、私が要求した歌が、彼の知らない歌とか、歌い難い歌とかだった場合、

それに代わるアイディアをたくさん出してくれる。

制作側にとって、「必要とする内容に応じてくれる」、というのが非常に重要なのだ。



そして、何より、全力で協力して助けてくれる。

彼に作品の内容とテーマを伝えると、それについて、ものすごーーく

真剣に、それも日々考えてくれて、そして各場面・場面で必要となる、

「意味を表す歌」を、多くの歌の中から次々と探し出してくれる。

それから、歌の持つ深い意味を教えてくれる。

そして、私が気に入るかどうか、振り付けのイメージが深まるか、

作品に役に立つかなど、私の意見を尊重して、そして歌ってくれるのだ。

良い歌詞がみつからない時には、自ら作詞もしてくれる。

本当にありがたい!



フラメンコを舞台上で演じるにあたって、カンテが最も「核」となるのは痛感しているけれど、

やはり、我々のような外人にとっては、その「核」の部分が、無知であるから恐ろしく、

最も行き詰ってしまう、一番弱点となる部分なのだ。

だからこそ、彼のように次々とアイディアを与えてくれて、

私の想像力を膨らませてくれる歌い手は、心から感謝の気持ちでいっぱいになる。

ホント~~に、ありがたや~~~ありがたや~~~、なのでアル。



さっきも、作品に合う一つの歌を思い出した、と言ってメールを送ってきてくれた。

前回のブログにも書いたけど、カンテには、少ない言葉数の中に、

深い深い意味があって、たった一言の中に大きな意味をどーんと含んでいる。

歌詞を読んで、本当に胸がぎゅーっとなって涙が出た。

私が表現したい事の、ど真ん中の的に見事に矢が命中した感じがした。



なので、過激して彼に即座に返答した。

「ありがとう! あまりにもスンバらしいから、この調子で考えて、

もっと素晴らしい歌をたくさん思い出して準備しといてチョ!」 と。



読み返して、エッラい、ずーずーしい返答だなぁ、と思ったけど、

ま、イイか、と思い、送信した。


舞台をやる度に、歌い手のチョイスで頭を抱えるけど、

こういう素晴らしくて、ありがたい歌い手と仕事が出来る時って、

本番までの死ぬほど大変な準備も、辛い練習も、

カンテが耳に入ってきた瞬間に、全ての苦労が消えて、

「ああ!!!何という幸せ!!!」、と心の底から思う。


そして、踊りながら、歌の上手さに感動し、

歌に泣かされ、歌に心が震える。

「フラメンコを踊る」、正に至福の時だと思う。


だから、どんなに準備が大変で辛くても、、、

その瞬間と出合うために、頑張れるのだ。



                                 7月18日

by amicielo33 | 2013-07-18 23:20  

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