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  時間があると思ったのに

セビージャでは、思い切りリサイタルの事だけに集中して、

それ以外は時間がたっぷりとあると思ってた。


が、、、、、それなのに、、、、、ああ、それなのに、、

結局、スタジオに午前中から夕方までこもっているので、自由時間は少ない。

まぁそのために来たので仕方ないけど。



それより、セビージャらしい事が毎日たくさん起きるので可笑しくてたまらない。

2日前から、ギタリストのアントニオの家のスタジオで練習と打ち合わせをしている。

彼は、セビージャから30分離れている町に住んでいる。

東京で言えば、新宿と吉祥寺くらいの感じ。

セビージャ近郊へ向かう大きなバスステーションみたいな所から

バスに25分くらい乗って行かなくてはいけない。


私は、昔よく彼の家で練習していたのだけど、昔から大きく町の様子が変わって、

降りる停留所がわからないので、アントニオにどこで降りればいいか聞いた。



アントニオは、「アミ、バスの運転手に、『○○○○の地域で降りるから、

その付近に来たら教えてください』、と言っておけば大丈夫だよ。

大きな目印として、バーガーキングがあるから、それが見えたら

降りるブザーを鳴らせばいいから」 と、教えてくれた。


次の日、大きなバスステーションに行って、さっそくバスに乗り込み、

バスの運転手にお金を払いながら、昨日アントニオに言われたように、

「○○○○の地域で降りるから、その辺りで教えてください」と、

運転手のオッちゃんにキチンと伝えた。

そしたら、オッちゃんは、


   う~~~~~ん、、、、  と、うなり


  『 そんな場所は、わからん 』   と、言い放つ。



おいおい、それでは私は困るのだよ。

んじゃぁ、「バーガーキングが目印だって、友達が言ってたけど、、、」と言うと、

運転手のオッちゃんは、


   う~~~~~ん、、、、  と、うなり


   『 まっっったくわからん 』   と、気持ちいいくらい言い切った。



ここまで、言い切られると、思わずこっちも、


   あ っ そ・・・・        となる。



このオヤジは、東洋人へのイジワルで言ってるのはないのはわかるので、

ま、イイヤ、どーにかなるか、と思い、仕方なくバスに乗り込んだ。

乗客は少なく、私以外3人しかいない。

そこに、スペイン人のオバちゃんが乗り込み、

ドコソコに行きたいので、その辺りに来たら教えてほしい、と言う。



するとその運転手のオッちゃんは再び、


    う~~~~~~ん、  と、うなり、


    『 そんなところ、聞いたこともない 』   



と、美しくも実に正直な言葉を吐いた。

こういう時は、スペイン人のオバちゃんは絶対に喰いついてくる。

機関銃のように、ダダダダダダダダ!と、降りたい場所についての

ありとあらゆる情報を運転手のオッちゃんに撃ち放つ。



すると、じっと機関銃言葉を聞いていたオッちゃん運転手は、


     『 どんなに言っても、ワシはそんな場所はわからん 』  


とピシャリと言い、


      『 後ろに座っている乗客が知っているから聞け 』   


と、話しのコンパスを気持ちよく閉めた。 オレー!


私はエラく受けてしまって、ブハハハと笑ってしまった。

機関銃オバハンは、鼻の穴を膨らませてバスにドカドカ乗り込み、

当然、私にも、「この場所知ってる?!」と聞いてきた。

私だって、何もわからず乗り込んだのだよ。

あ~可笑しい。

その後、アントニオに聞いていたバーガーキングを見つけ、無事に降りることができた。



まだたくさん他にあるけど、また書くことにして、

昨日から歌い手のダビ・ラゴスも参加してくれている。

しかし彼は、彼の子供→奥さん→ダビへとまわってきたバイ菌にやられた、と言って、

実に悪い顔色でへレスから来てくれた。

ダビは10月に日本で開催されるフラメンコフェスティバルで、

ベレン・マジャとイスラエル・ガルバンの歌を歌うので、

昨日もベレンとの練習があったけど、自分の具合も悪いし、

私の滞在日数も少ないので、ベレンとの練習を断ってわざわざ来てくれた。

申し訳ない!



アントニオもそうだけど、ダビ・ラゴスは(私のリサイタルで何度も彼に歌ってもらっている)

最初に、私のやりたい事、作品内容、意図を、よーーーーーーく聞いてくれる。

それから、私が考えている流れや、動き、作品構成を、よーーーーーーく聞いてくれる。

こうして全体の作品の意味、意図、流れ、目的を完全に把握してから、

今度は、彼の意見とアイディアを次々と話してくれる。

具体的なリズム構成、候補となるカンテ、曲のテンポ感など、

私のアイディアを、20倍にも30倍にも膨らませてくれる。

そして、全てのカンテの歌詞が作品の意図に合うものを考えて選んでくれる。



彼が素晴らしいアイディアを次々と出してくれる時、

無意識に両手を合わせて、拝むように聞く自分がいる。

そして、この言葉がぐるぐる全身を駆けめぐる。


  
  やっぱり、キミはスゴイのだ ☆☆☆


  そして、フラメンコは、絶対に貴方たちのものなのだ ☆☆☆


  
  貴方たちしかわからない、宝 なのだ ☆☆☆



どんなに外人が必死に学ぼうと、たとえアンダルシアの地に長い間、

外国人がスペインの人間と同じように過ごし、同じように生活しようが、

【フラメンコのカンテ】だけは、つまり、【フラメンコは】、

スペインの、アンダルシアの、フラメンコが歌い継がれてきた、

その土地で育ち、一生フラメンコと共に生きている彼らのものだからこそ、

彼らにしかわからないことだらけで、外人には決して手の届かない、

「憧れ」と、「実に羨ましい世界」なんだ、と

ダビの歌を聞きながら、たまらない幸せを感じながらも、

今まで何百回となく感じてきたことなのに、今回もしみじみと

外国人とフラメンコの距離、つまり、「現実」というものを改めて痛感してしまった。



だから、こんなに凄いフラメンコの文化に接する時、我々外国人は、

フラメンコに対して謙虚にならざるを得ない。

今回のリサイタルでも、準備段階から、素晴らしい宝に直に触れさせてもらって、

震えるほど感謝の気持ちでいっぱいになる。

と、同時に、「踊れてなんぼのもんじゃ・・・」と、

自分の存在がアホか、無のような気がする。

そこにたどり着いちゃったら、身も蓋もないので、まぁ考えない方がヨロシ。




明日も、フラメンコ以外、セビージャらしい事に出会えますように(^_-)-☆

また遅くなっちゃった。(スペイン時間の夜中の2時半)

おやすみなさい!



                                     9月25日

by amicielo33 | 2013-09-26 09:27  

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